10歳でデュシェンヌ型筋ジストロフィーと診断された土屋竜一さんの子供時代を書いた本です。
竜一さんことリュウちゃんのあまりの元気っぷりに驚きます。
10歳で筋ジストロフィーと診断されたという事なので10歳未満の時にはまだ元気よく動けていたことがわかります。
吃音の男の子「カズヨシ君」との心温まる釣りのお話や学校生活等も楽しいです。
可愛らしい初恋や高校生のお姉さんとのやりとりもほっこりします。
しかしながら出てくる大人がろくでもない大人ばかりなので少し不愉快になりました。
「小諸のおじいちゃん」はリュウちゃんが遊びに行くと
「リュウちゃんが来ると、飯がまずくなる」
と言います。
(愛情の裏返しっぽい表現も出てきますがこれは酷い…)
「高井先生」はリュウちゃんの話を全く聞かずに
「お前は先生たちが信用できないのか!じゃあ俺もお前を信用しない」
と言ったり
「リュウちゃんがいるのでちょっと予定が遅れています。」
とわざわざ本人に聞こえるように言ったりとにかく酷い先生です。
「ヤスナガ先生」はリュウちゃんが修学旅行に行きたいと訴えるも
「海は波がある。波は怖いんだぞ」
と修学旅行に行くことをリュウちゃんに諦めさせます。自分の受け持ちの子どもが水難事故などにあったらどうしようという自らの安心のためだと思うのですが酷い。
まだリュウちゃんは歩けるので泳ぐこと禁止してでも一緒に旅行に連れて行こうと努力するのが先生ではないでしょうか…
バスの運転手さんとのやり取りは胸糞悪いです。
障害があり障害者割引を利用している子どもに向かって「泥棒がきた!」と言ったり、段を上り切っていない時にバスを発車させたり、 バス停から何百メートルも先へ行ったところでわざとバスを止めたり…料金を払い終わっていないのにバスを発車させてリュウちゃんを振り落としたり…
しかも意地悪をされてバスに転がりこんでも手を差し出してくれる人は誰もいない…
いまだったらSNSでさらされて大問題になっているはず。
今でもそのバス会社を探しだしてつるし上げた方が良い様な気もしますが…
本当にろくな大人がでてきません。
(お父さんとお母さんはあまり出てこずに空気状態なので印象に残りませんでした)
二つ不自然だったのは「レモンの香りのするお姉さん」のファッションと看護師という表現。
のざわ菜漬けを持つ庶民的なお姉さんなのにファッションがパーフェクトモデルファッションです。
ミニスカートとは書かれていますが、1964年生まれの作者の子供時代のお話でこのファッションは出ていないと思います…
レモンの香りのするお姉さん(お父さんの元教え子のエツコさん)が「私は看護師」と言っていますがこの当時はまだ「看護師」という言葉が無かったです…
時代背景に気になるところはありますが、リュウちゃんの冒険がいかにもわんぱくで楽しく読めました。
弟のシンちゃんが途中から全く出てこなくなるのでもうすこしシンちゃん寄りのお話も読みたかったです。
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ぼくにできること 子どものみらい文芸シリーズ
著者 土谷竜一
絵 Mariya Suzuki
解説 谷郁雄
発行人 松崎義行
発行 みらいパブリッシング
2018年2月1日初版第1刷
2018年3月6日第2版第1刷
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