筋ジストロフィーの画家、大塚晴康さんの人生がまとめられている本です。
表紙をめくると美しい絵が掲載されています。
1937年生まれの大塚さんですが、裕福な家庭という事がわかる描写が多いです。
この時代には自家用車がある家庭は少なかったというのに高校二年生の時には原動機付自転車を与えられ、モーターバイクの免許を取りスクーターにも乗っています。
自分の自家用車を持つ事が難しかった時代にもかかわらず自分専用の車まで持っています。
戦後の厳しい時代にお金の苦労をしている描写がないという裕福さがこの本の見どころかもしれません。
全体的にあくせく働く描写もないので戦後のお話しとは思えない暮らしぶりです。
父母ともに賢く、病気に対しても前向きに考えています。
T大の先生に「小児マヒ」と言われても母親は「進行性筋萎縮症では」と正しい判断をしいろいろ学んで素晴らしいです。
そして父親がアメリカ出張の際には「クラッチ」とうアメリカ製の杖を買ってきています。だんだんと動けなくなるという病気に対しての前向きな考えなどが感じられ、両親の病気に対する学びが良く感じられます。
当時は筋ジストロフィーの事を進行性筋委縮症と読んでいた事が書かれており、時代によって病名等がすこし変わっていく流れが良くわかります。
全国進行性筋萎縮症児親の会が出来たり、筋ジストロフィー協会が社団法人になったりと時代背景も読み取れました。
国画会展に絵を出すことに挑戦をしたり、子供達に絵を教えたり大塚さんの人生はまさに絵と共にある感じです。
その後奥様と結婚後離婚したりと大変な日常を送られましたが、オーストラリアに行こうと考えている大塚さんの前向きな姿勢で最後が終わっていたので爽やかに読み終えることができました。
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風色にそまるキャンバス 筋ジストロフィーと闘いつづける画家・大塚晴康の物語
作者 浜田けい子
画家 井上正治
発行者 松田正美
発行所 ベップ出版株式会社
1989年3月29日第1刷発行
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