闘病記しか読みたくない

闘病記しか読みたくない管理人「つばめ」のブログです。日本中の闘病記が読みたい。悪趣味だと言われようが闘病記や病気をテーマにした本から感じ取れる生への記録に感動している毎日。本の紹介はネタバレを含みます。道端のポスターの写真等を撮るのも好きです。すべての写真は自分で撮影しているものです。

あふれる光の中で ドキュメント青春賛歌

12の物語の中で青春賛歌を感じ取れる作りになっています。どれもずっしりした重みがある物語で読み応えがあります。

 

1・渡辺一博くん

父が交通事故で重傷になり、家庭の事情のため高校への夢をあきらめかけていた一博くんが故郷を離れ高校野球に打ち込む物語。得意の変則投法を禁止され、苦悩する様がリアルでした。

 

2・吉森こずえさん

最重度のサリドマイドでの障害を持ったこずえさんが両手が不自由なハンデを乗り越え短期大学へ進学し勉強に励む物語。小学校の頃には八キロもある義手をつけ奮闘します。

 

3・秋葉正保くん三兄弟

正保くんの母は新宿西口バス放火事件の被害者です。夫とは離婚し母一人で三人の息子とお婆ちゃんをささえる大黒柱でした。偶然にもバスに乗っていた為に全身の80%以上の大火傷、熱い炎を吸い込み気道熱傷も酷く、治療や輸血の甲斐もなく敗血症による肺炎のため苦しみ抜きます。

大黒柱の母が亡くなった後は正保くんは中学校を卒業をすぐに都内の印刷会社に就職し働きはじめる事を決めました。

 

4・山田富也さん

筋ジストロフィーながらもエネルギッシュに生きる富也さんが輝いています。劇映画「さよならの日々」の自主上映のため体にムチ打って活動しています。三兄弟全員筋ジストロフィーながらも前を向いて生きている所が素晴らしいです。

 

5・有馬重幸くん

母が肺炎で亡くなり、父親も行方不明となり親戚の家に預けられるも、体が弱いために「少年の家」に引き取られた重幸くんが主役です。軽度の知恵おくれ(昔の本なのでこの書き方をされています。知的障害と言い換えたい所)で心臓病の重幸くんの明るさが心に染みます。心臓病を詳しく書くと心室中隔欠損症というかなり難しい病気だという事がわかります。

重幸くんの手術は「小川宏ショー」で全国に生中継されるという異例の出来事があったそうです。

 

6・菊池修くん

弟の修くん、兄の健一くんが筋ジストロフィーと闘う物語。昔の事なので「あの家はもともと……だからなア」「なにかのたたりに違いねえよ……」と悪意ある言葉を耳にすることも多かった様子。

健一くんは車いすごと転倒し両ひざを骨折し前歯を三本も折る事故にもあっています。兄の健一くんは心不全で亡くなります。

父の菊池弘さんが傷ついた白鳥を一人になってしまった息子に重ね合わせているのが印象的でした。

 

7・高田富士昭くん

医療ミスで右手が不自由な富士昭くんが野球を頑張るお話。生まれるときに医師が鉗子の使い方を誤り頭と肩の部分の右手に通ずる神経を一本ずつ切ってしまったため右手が不自由となりました。富士昭くんは六か月ごろには内臓ハシカにかかり、二歳半ごろには風邪をこじらせて腹膜炎をおこし、盲腸の手術もしています。

就職は大和銀行にきまり、銀行側から招かれる形で就職できています。ハンディを克服した所などが注目され努力が実りました。

 

8・山崎浩三くん

全盲視覚障害がある浩三くんが母からの腎臓移植をうけるお話。腎臓病のためつらい水分制限をし、人工透析で命をつないでいた浩三くんですが母の腎臓がなじみ体の調子をとりもどします。臓器移植が成功したので一安心です。

 

9・悪原真由美さん

母が病死したため若くして家事などを背負うことになった真由美さんが頑張るお話。母の正子さんは胃が痛いという症状があったので胃の病気で亡くなったと思われます。

父子が力をあわせて生きていく姿は町の人たちからも声援がおくられるそうです。

 

10・大賀誠くん

アテトーゼ型脳性まひの誠くんが小説を出版するお話。仮死状態で産まれ先天的な脳性小児まひとなりました。父は誠くんを残して家出し死亡。母親のせつ子さんは働き子育てをし、再婚をします。そして義父も病死するという出来事が続きます。ただ誠くんはくじけずに小説を書き立派に生活しています。

 

11・笹本吉起くん

幼い時に脊椎腫瘍(本では脊椎しゅよう)で下半身が不自由になってしまった吉起くんが活気ある高校生活を送る物語。吉起くんの兄(長男)も生後約20日で黄疸が悪化し死亡しています。良い先生やクラスメートに恵まれ元気よく生きる姿が眩しいです。

 

12・事故死した友への鎮魂歌

交通事故で死亡した内田直樹君を忘れない様思い続ける友人達の物語です。危険な場所にようやく信号が設置され、使用の五日前に起こった交通事故ということで家族の無念は計り知れません。あと少しで信号が使われる予定だったのに…

 

どの話もドラマチックで青春賛歌という言葉が良く合っています。

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書評・レビューランキング

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あふれる光の中で ドキュメント青春賛歌

著者 檜野里夫

発行者 堀内末男

発行所 株式会社集英社

昭和56年5月15日第1刷発行

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