田中澄子さんによる遺稿・詩・イラスト・手紙などをまとめてある本です。
表紙はうつぶせになっている澄子さんと愛犬のドン。
澄子さんは筋ジストロフィーで昭和50年8月10日未明に佐賀市の自宅で14歳の生涯を閉じました。
作家を夢見ていた澄子さんが毎日新聞の読者の広場欄に寄せた投書「その時、虹を見るような」という投書を掲載したことでペンフレンドが増え、この本にも手紙が多数まとめられています。
前半はペンフレンドにあてた手紙です。
年上のペンフレンドと楽しい文通をしています。ペンフレンドの手紙は掲載されず、澄子さんの手紙のみの掲載ですがかなり興味深く読めました。季節の事、読書の事、健康について…など飽きの来ない話題で楽しい文通が続きます。
久保田泰子さんに宛てた手紙には「愛と死をみつめて」を読んだことが書かれています。
遠藤中男さん宛ての手紙には風邪をひいたことや妹のおたふく風邪の事も報告し、楽しかったことなども逐一報告し本当のお兄さんのように宛てた手紙を書いていて微笑ましかったです。
山崎克彦さん宛ての手紙には体が不自由なおばあさんの事を丁寧に書いたり、筆不精をあやまったりとイキイキ書いています。
幸美保子さん宛ての手紙には本のお礼や愛犬ドンがフィラリア(ヒラリアと書いてあります)になってしまったことが書かれています。夏バテや不眠症なってしまったり体調の事も正直に報告しています。
同病の成田正憲さん宛ての手紙には、愛犬ドンを失って悲しんでいたところ、新たなダックスフントを成田さん経由で迎え入れられたお礼や、セカンド・ドンをとても可愛がっている様を書いています。
本の中頃からは詩がまとめられています。10代とは思えない大人びた詩が並ぶので読み応えがあります。
最後は日記です。正直に自分の気持ちを書いている日記が一番この本で光っていました。病気になって不自由になる体に対する理不尽さが正直に書かれています。
闘病記の「この生命ある限り」を読んでギクっとしたり、ノイローゼが出てしまったり、妹の栄ちゃんの縁談にひびくから栄ちゃんが自分の事を恨むのではないかと心配になったり、ベルサイユの薔薇のオスカルに恋をしたり…
愛と死をみつめてを読んだ影響か、大島みち子さんの日記と似ている部分が多くありました。
巻末はペンフレンド達からの澄子さんへのメッセージ。
小林静江さんのメッセージが特に印象に残りました。脊椎カリエスで半身不随だった妹を失った悲しみ等もあり、寝たきりの子供に本を通して喜びを運びたいと考え澄子さんに「本を送ります。どんな本がすきですか?」と手紙を送っています。
早すぎる死が残念すぎます。文章力の高さがあったので作家やコラムニストで活躍できたと思われます。
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そのとき虹を見たような ある少女の遺稿
著者 田中澄子
編集人 浜田琉司
発行人 伊奈一男
発行所 毎日新聞社
昭和51年6月10日第1刷
昭和51年7月10日第2刷
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