闘病記しか読みたくない

闘病記しか読みたくない管理人「つばめ」のブログです。日本中の闘病記が読みたい。悪趣味だと言われようが闘病記や病気をテーマにした本から感じ取れる生への記録に感動している毎日。本の紹介はネタバレを含みます。道端のポスターの写真等を撮るのも好きです。すべての写真は自分で撮影しているものです。

余命10年

余命10年の女性、茉莉が恋人と過ごす日常を書いた難病あるある系の物語。

 

主人公の茉莉の病名は「原発性肺高血圧症」であると思われます。

「臓器名と症状で組み合わされた漢字八文字ほどの羅列。国の医療機関が特異で稀な病だとお墨付きまで与えている」と書かれており、作者が茉莉と同じ病気を使って小説を書いているんだろうなあという事が予測されます。

 

悲劇のヒロインぶる茉莉は自分の病気を知って欲しくて仕方ないのに以下のような文章で人を突き放します。

「病名を他人に告げても無意味だと思い知った。普通に生きている人間は病気の名前などほとんど知らないものなのだ」

 

恋人の和人に対しても同じような事を言っています。

(病名を聞いた和人に向かって)「言ってもきっと知らない。悪いのは主に肺かな……でもいろいろ悪くなって句から、どこが一番悪いかわかんない」

 

恋人の和人は茶道の方面では有名な家柄の息子でパニック障害を理由に家を継ぐ事から逃げ回っています。当然イケメン。

和人は作者がこういう男性に愛されたかった…という思いで作られたキャラと感じられました。

和人は小学校の頃から茉莉をひたすら愛し、家柄も良くボンボンでお金持ち、いい友人にも恵まれサーフィンなどの趣味も充実、神童と呼ばれるほど天才でなんでもそつなくこなせるパーフェクト男性。ボード、サーフィン、陸上、テニス、バスケ、サッカー、体操、大学の研究…なども完璧対応。

……いくらなんでも盛り過ぎです……極めつけはスキーのハーフパイプでオリンピックを目指そうと思っていた設定。ええ……ハーフパイプって難易度最高レベルのスポーツでお金もかかるのにオリンピック目指そうとしていたとか…和人の設定もりもりすぎて怖い。いわゆる現代の王子様ってやつです。

 

茉莉は貧血を起こしたり肺に問題がある動きに制限のあるタイプの難病なのに趣味設定が和人と同じくもりもりで違和感があります。コスプレをし(美人)、衣装を作り(雑誌の表紙になるほどの腕前)、同人誌を描き(最初から上手)、投稿漫画(単行本出せる実力あり)まで描いています。どれか一つに絞った方が良かったかもしれない。例えばコスプレ衣装を一着作るだけでも大変なのに病人に複数趣味は難しいでしょう…

 

優しい裕福な両親、美しく自分に優しい姉、自分の事だけを考えてくれる親友、充実した趣味、ひたすら自分を愛してくれる和人…余命10年でなければ茉莉の人生は最高なモノだったのになあと思いながら読みました。

 

合間合間に挟まれるポエム部分はテンポが悪く寒々しい気持ちになるので不要だと思いました。

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著者 小坂流加

カバーイラスト loundraw

発行者 瓜谷網延

発行所 株式会社文芸社

2017年5月15日初版第1刷発行

2021年4月20日初版第16刷発行

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