昭和48年8月に大阪で開かれた万博を見に行き、47歳で脳卒中で倒れた安井信朗さんの手記です。
命はとりとめたものの脳血栓・脳梗塞としては最も重い部類の症状の為、全身麻痺、重い言語障害が残り始めは植物人間と言われる状態でした。
倒れる前には予兆の様な耳鳴りや頭痛があり、医師に診てもらい入院するも原因不明で退院しています。
奥様の昌子(あきこ)さんが寝たきりでの安井さんを見て「健康な頭脳がみえる」と意思伝達の手段を見つける決心をする所が夫婦愛に溢れています。
四肢まひでもわずかに動く腕に装置をつけてみたり、鉛筆を握らせてみたり…いろいろ工夫し、最終的には電動タイプライターにたどり着きます。
元同僚のHさんの筋ジストロフィーの息子の橋爪正宏君と文通もされています。正宏くんから丁寧な字で書かれた手紙が届いています。手紙はそのまま掲載されていますが美しい字体できちんと書かれたことがわかる文面です。
不幸にも19歳で正宏君は亡くなりますが、妹の純子さんの新聞投稿された「死んだ兄から学んだ生」がそのままこの本にも掲載されています。
小児ぜんそくであった娘の清子さんもたくましく成長し息子の浩明さんも元気に成長し親としてもすぐれた人だったという事がわかりました。
タイプライターを私は触ったことがないのですが、一度タイプライターを使ってみたいと思う本でした。
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パパは生きている 植物人間から奇跡的に甦ったある科学者の手記
著者 安井信朗
発行者 稲垣喜代志
発行所 風媒社
1977年12月1日第1刷発行
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