先天色覚異常で色を見ることができない11歳の少年オーデン・デアが主人公。オーデンの見る世界は白黒ですが、ずっと白黒の世界に住んでいるので「実際には何も失っていない」と考えています。
オーデンのおじさん、先天性の心臓病があったヨナ・ブルームが心臓発作で亡くなり、その死を不審に思ったオーデンがパラゴンと共におじの死とレインボーマシンの謎をあばく…というお話。
この世界は独特で、戦争中で近未来っぽい雰囲気があります。人々は腕につけたクワーティという端末をスマホのように扱っています。
水不足がこれでもかと物語で綴られるのでレインボーマシンが「水関連」だというのはすぐにわかります。(表紙でも虹色の雨が降っているのでネタバレしています)
オーデンはレインボーマシンが「自分の先天色覚異常」を治してくれる「何か」と思い込んで話が進んでいくので少しイライラしながら読むことになります。(ヨナおじさんは医師ではないのでさすがにそれは無いだろう…と思ってしまいます)
オーデンはヴィヴィという聡明な少女と出会うことになります。ボーイミーツガールが爽やかに描かれていて二人の出会いややり取りは読んでいて癒しでした。
ヨナおじさんが非常にまどろっこしい事をしていて謎。レインボーマシンはいわゆる「雨を降らせる」器械だったのですが、わざわざオーデンとヴィヴィに謎解きをさせ、パラゴンを目覚めさせ、パラゴンに特定の言葉を聞かせて情報を引き出し、パラゴンから部品をとりだしてレインボーマシンに設置しています。
面倒くさい段階を踏まないと雨を降らすことができないため、オーデンのやった事が上手くいって良かったのですがこんな面倒くさい事をせず、ヨナおじさんが一人でレインボーマシン(レインマシン)を淡々と起動させればよかったんじゃないかな…と思ってしまいました。
いくら戦争中とはいえ誰にとっても必要な「水」に関係する装置なんだから国も科学者達も協力してくれるでしょう…
オーデンの先天色覚異常は最後まで治りませんでしたが、色を音で聴く「光学ボーグ」を手に入れハッピーエンド。パラゴンが動かなくなってしまったのは残念…パラゴンが復活したら続編が期待できそうな世界観なので惜しい。
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パラゴンとレインボーマシン
作 ジラ・ベセル
訳 三辺律子
装画・挿し絵 西山寛紀
発行者 野村敦司
発行所 株式会社小学館
2021年6月28日初版第1刷発行
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