難病(筋委縮症)の厚志くんを見守る母、武井ちえ子さんの手記です。
なぜ難病(筋委縮症)と書いたかと言うと、実際には病名不明と書かれていたからです。
該当病名なし、筋肉が萎縮しているから筋委縮症と言うしかないそうです。
ちえ子さんは不幸にも子供を三人無くされているのですが、おそらく全員遺伝性の病気だったのでは…と思われます。
物語中ごろまでは筋ジスかもしれないけど脳性小児マヒとちえ子さんは信じていて、98ページあたりから「筋ジストロフィーかも…」というお話が出てきます。
ちえ子さんの厚志くんを見守る心の深さが凄い。
まだ福祉が発達していない時代なので辛い目や苦しい目にかなりあってしまうのですが、我が子への愛情がいろいろな所に感じられて読んでいて感動します。
良かったところはちえ子さんが信仰に走らなかったところ。
難病の家族を持つ母は悪い事ではないのですが信仰に走りたがるのですが、ちえ子さんは
「神とはどこかにある偶像なのではなくて、自分の心の中に存在する信念だと思っています」
とバッサリ信仰を切り捨てています。
これは頷くしかありませんでした。ちえ子さんのこの一言は私の考えに近いです。
タイトルが「厚ちゃんの靴音」なのですが、実際には厚志くんは生まれてから一度も歩いていません。(冒頭で新しい靴をはいて音をならす厚志くんの描写はあります)
「厚ちゃんの靴音」は一度でも良いから元気よく歩いて欲しかったという母の愛がつけたタイトルなのかもしれません。
不幸にも厚志くんは七歳でお亡くなりになるのですが、父母から愛され友人からも愛され良い人生だったのではないでしょうか。
----------
----------
厚ちゃんの靴音 筋萎縮症の子を育てて
著者 武井ちえ子
昭和48年4月29日初版発行
昭和48年7月17日第2刷発行
製作 主婦の友出版サービスセンター
----------
----------