施設で暮らす9歳の少年ヒルベルの人生が淡々と書かれています。ヒルベルはニックネームで本名は「カルロットー」です。ドイツ語では脳や知能の事を「ヒルン」と言い、うずとか混乱の事を「ヴィルベル」と言うので「脳が混乱している」事から「ヒルベル」と呼ばれています。蔑むニックネームなので辛い。
ヒルベルは生まれる時に医師が鉗子で引き出した時に頭を傷つけ、ある病気(病名不明)があり、いつも頭痛を訴え母親はヒルベルをいらないと放置してしまいます。
ヒルベルは頭痛だけでなく、歌は上手く歌えますが言葉が不自由で吃音(どもり)、耳鳴り、めまい、腹痛、怒りの発作…など、複数の症状がみられ全体的に病弱です。仮病を使ったりもしますが全体的にヒルベルの体調は悪い事が多いです。
脳が混乱しているからか大人達からは嫌われてさまようヒルベルですが、最後まで救いの手は現れないような終わり方をします。
ヒルベルが好きだったマイヤー先生さえも「あの子は、その後どうなったのかしら」とつぶやいて終わります。
救いようが無いので辛い読み応えでした。
----------
----------
ヒルベルという子がいた
作者 ペーター=ヘルトリング
訳者 上田真而子
発行者 今村廣
発行所 偕成社
1978年9月初版1刷
1992年9月増補版16刷
----------
----------