主人公は昭和元年生まれの越後の山村で生まれた三男坊、元スーパマルシンの会長。
店舗を複数もつ働き者だった主人公が引退してからノンビリ釣りを楽しんでいる時に川原で純一という筋ジストロフィーの少年に会うというお話。児童文学の主人公がおじさんとは珍しい。
純一は学校には行っておらず、わざとらしいくらい優しい父親がいます。母親は現在はいない様子。母親の事を純一の父に訪ねようとするとやんわり「探らないで欲しい」アピールをしてきます。ここらへんで感のいい読者はDVで出て行ったとわかるはず。
見た感じは優しい父と暮らす純一は学校にも行けず母親とも会えず、満たされない日々を送っています。
そこで主人公の妻と主人公の身内が頼まれてもいないのに「勝手に」「純一の母親探し」をすることになるのですがとんでもない展開だと思いました。
マルシンの会長である事をいかし、純一の父の働く店舗に身内の大野君(母が主人公の妹)を純一の父の監視の為に送り込みます。しかも調査代金を月に五万出しています。
他人の個人情報をクンカクンカ嗅ぎまわるので本当に読んでいて嫌な気持ちになります。
そして個人情報ガバガバで読んでいて辛い。純一が昔に住んでいたマンションに行ったり、母親から純一に送られた手紙を勝手に開けて読んだり犯罪じみた行為もしています。いかにも切羽詰まって母親からの手紙を開けて「良い事をしている」風にハサミで封を切っていますが、他者の手紙を勝手に開けて読むのは「信書開封罪」です。
正直純一の父は許されるべきではない存在だと思います。妻を殴る暴行を加え、肩といわず腹といわず、女性の全身に赤や紫やどすぐろくなったアザを作るような男が幸せになっていいはずがない。
最後は純一が無事に母とあえて一見ハッピーエンド的におわるのですが、DV問題が解決していない以上素直に喜べない終わり方となりました。
書いている作者は男性なので女性がどれだけ家庭内暴力を憎んでいるかよくわかっていない描写が多かったです。あとがきにも暴力行為については記載なしで残念でした。
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野菊 川原で会った少年のなぞ
作者 佐藤州男
画家 酒井臣吾
発行者 佐藤武雄
発行所 文研出版
1991年12月20日第1刷 発行
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