ダウン症の16歳の少年セブ(セバスチャン)が主人公。
両親は離婚しておりオーストラリアの牧場で生活しています。家族はガンの母(はっきりとは書かれていませんがおそらく白血病)と13歳の弟のアレックス。
弟のアレックスがセブに嘘をついた事から物語がはじまります。
「手で三角形を作り、それを飛行機に向けて飛行機が三角形の中に入ったら手をパチンと叩いて100機の飛行機をつかまえると願い事がかなう」と言う嘘です。
この嘘を信じてセブが母親のガンを治すために飛行機を探して冒険をします。
セブのダウン症ですが、ダウン症の少年にここまでできるのか?という描写が多くて疑問が残りました。
セブは田舎に住んでいるので学校には通っておらず、一般的な常識を学ぶことは難しいはずなのですがすぐに新しい環境になじみ、自分で考え、結果を出そうとしています。
さらに一回も載ったことがないスケートボードに乗って危険な坂をジグザグに滑り降りています。
初めて乗ったスケートボードで大活躍する描写は不自然。
そしてジャックという心優しい少年と知り合うのですが、ジャックは家族が留守の間は家に入って自由にしてよい、とセブに伝えます。
よその家のシャワーなど、ダウン症のセブがすぐに使えるとは思えない…
最後はジャックの父親がセブの母親のドナーとして適合するのですが、うまく行き過ぎてドン引きの展開でした。
白血球の型が適合するのはものすごく確率が低いのに、とある町で知り合った親切な少年の父親が「わたしが、ドナーです」と現れるのは非現実的。
オーストラリアはドナーと患者の顔合わせはオーケーなのでしょうか?
日本だと「提供する側」「提供される側」と区別がはっきりしていて、上下関係を作らない様にドナーの情報を徹底的に隠す方針ですし。
これでジャックの父が「ドナーとしていろいろ提供しますが○○を要求します」とかセブの母に言ったらどうするんでしょうか。
基本的にドナーと患者の顔合わせはしていはいけないと考えている派なので最後にモヤモヤが残りました。
物語の展開が出来すぎていて読んでいる間にどんどん冷めていく…という珍しい読み心地の本です。
訳者あとがきでも「セブの状態はかなり軽い印象」と書かれていました。軽いどころかダウン症とは思えない行動が多いので疑問ばかりが頭に残る作品でした。
----------
----------
----------
ウィッシュ 願いをかなえよう!
作者 フェリーチェ・アリーナ
訳者 横山和江
イラストレーション きたざわけんじ
発行者 鈴木哲
発行所 株式会社講談社
2011年8月8日第1刷発行
----------
----------