主人公は12歳の美和子。さし絵や表紙をみるととても美しい少女です。
美和子が「雨も心の友」を書いた作家の砂川陽子先生に手紙を書き、砂川先生がアポなしで美和子に会いに行く所から話がはじまります。
個人情報の扱いがガバガバなのが気になりますが、1984年の本なのでまだ個人情報の取り扱いが甘かったころなので仕方ないです。
今だったら来た手紙から住所を確認し、作家が読者の元へ出向いたら通報されそうです。
砂川先生は帝王切開で娘の尚子を取り出した後、子供が産めない体になってしまったことから女の子が苦労しているのが気になる様子。
父が刑務所に入っているので母が働き、貧困、貧乏で苦しいですが美和子はまっすぐに育ち、どこに出しても恥ずかしくないような礼儀正しさがあります。
美和子の父が「ただ優しいだけのバカ」だったことから悲劇がはじまります。
同僚の男、早川に騙されサラ金の保証人になってしまい生活に困った挙句に郵便局で強盗をしてしまいます。
美和子は「加害者家族」「強盗の娘」として世間の白い眼を向けられながら生きることになります。
犯罪を犯した為、せっかく買った新築一戸建ての素晴らしい家は四か月住んだだけで売り払う事になってしまったのが気の毒でした。
父は一年に三回は風邪等で熱を出し、弟の勇一も一年に二回は40度くらいの熱をだしている描写があり、勇一は肺炎になりかけてしまいます。お金がないので栄養のあるものが食べられず体が弱っていた様子。病気の子供をかかえているのにお金が無いためタクシーも呼べない母が可哀想でした。
救いは母が父をまだ愛している事と、美和子と勇一が父を好きなこと。刑務所から父がもどり、家族四人で幸せに暮らせることができますように…と思いながら読み終えました。
実際には刑務所から戻った元犯罪者は「ムショ帰り」という事で仕事につけず、荒れてしまう事が多く、DVや新たな犯罪に走ったりする事もあるので美和子の父だけはそうならないで欲しいなあ…と思いました。
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冬を旅する少女 美和子12歳
作家 中島信子
画家 前田真木子
発行者 田中治夫
発行所 株式会社ポプラ社
1984年12月第1刷発行
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