表紙は運転中のブラック・ジャック。車の中でもコートを着ているのが律儀でいいですね。
第1話「報復」では本態性動脈血栓症の子供が登場。ボッケリーニの孫ピエトロが病に苦しみブラック・ジャックに助けを求めるも医師連盟の会長の手回しでブラック・ジャックは手術できずにピエトロは心筋梗塞で死亡。
医師連盟の会長に心底怒ったボッケリーニが部下に医師連盟の会長の息子を撃つように命じ仮死状態にしてしまいます。即死状態ではなく仮死状態でぎりぎり死なない様に撃つ部下の銃の扱いに驚きですよ。
誰も幸せにならなかったお話です。
第2話「シャチの詩」は怪我をしたシャチのトリトンとブラック・ジャックのイチャイチャ話が読めます。「かれとの交際」と言っているあたりブラック・ジャックはズーフィリアの傾向があるような…
第3話「閉ざされた三人」では地震でエレベーターに閉じ込められた三人が苦労するお話です。ブラック・ジャックがデパートで何を買い物していたか気になります。
腹腔破裂の男性にインシュリンを大量注射し仮死状態にさせ空気を温存したブラック・ジャックの機転で全員助かるハッピーエンド。酸欠状態で苦しんでいた割にすぐ復活してデパート側からお金をタップリとってやるとイキイキしているブラック・ジャックのメンタルの強さが凄い。
第4話「ときには真珠のように」ではブラック・ジャックの命の恩人の本間丈太郎が医療ミスの懺悔の為にメスを送ってきた事から物語がはじまります。
ピノコは「メスをこんなにばらっちいもんれくるんれ送ゆなんてきっときちがいね」と放送禁止用語を口にしていますが、現在発売されている本だと訂正されている様です。
本間先生は子どもの頃のブラック・ジャックを手術した時に医療事故で体内にメスを置きっぱなしにしていて黙っていたのですが、黙っている事で罪の意識で苦しむことになります。このときに「待って待って!メス置き忘れた!」とさっさと申し出ていた方が「正直で良い」という評価になった気がする。
本間先生は脳軟化症と脳出血を起こしその後はブラック・ジャックの手術もむなしく老衰で亡くなります。
第5話「からだが石に…」では進行性化骨性筋炎で苦しむ少年が登場。進行性化骨性線維異形成症(FOP)と言われることが多いそうなのでこちらもカテゴリーに入れています。
少年の母が生んだ赤ちゃんが死んでしまったのでブラック・ジャックは赤ちゃんに少年の脳を入れることを決意します。ピノコ方式の脳移植ですがこれは怖い…少年は赤ちゃんからやり直しですってよ…
第6話「はるかな国から」ではスウェーデンからきた「イングリッドちゃん」と「山田さんの娘」が登場。ふたりは同じ「心臓中隔欠損僧帽弁大動脈弁石灰化」という先天的な畸形で手術も難しい状態。
ブラック・ジャックの意地で山田さんの娘は助かりますがイングリッドちゃんは死亡…
イングリッドちゃんも助かって欲しかった…
第7話「幸運な男」では整形により日本人の顔を手に入れたスラム出身の外国人が主人公。日本人技師の天堂一郎の顔を借りて日本に住むも苦労してしまいます。
同じく整形によって天堂の母「あや」になりすましていた女性と幸せな生活をしばらく送ります。あやは入れ歯をしていたのでそこから別人とばれ、女性は急性肺炎で肺血栓になり死亡。一時期でも親子の愛が感じられたので二人とも幸せな終わり方…とは思うのですが他人になりすます悪事を働いた二人が幸せを感じるってちょっと違うんじゃないかなーと思ったお話。(二人とも他人に成りすましただけなのでそんなに悪事は働いていませんが…)死んだ本物の天堂一郎と天堂あやが気の毒すぎる。
第8話「二つの愛」では交通事故によって両腕切断となった寿司屋の「タクやん」が腕を奪った原因である有馬明を寿司職人に鍛えるお話。タクやんが出来た人物すぎて泣ける…普通だったら自分の両腕を奪った人物を恨むはず。明は才能はあったようで立派に寿司職人になります。タクやんの視覚障害のおっかさんに明の寿司を食べてもらい親孝行もできて二人は幸せになるはずでした…(ここらへんBL展開っぽいですが明には妻がいます)
最終的に明はトラックにはねられ即死し、明の腕はタクやんに両腕移植されます。明の腕がついたタクやんと明の妻も良い雰囲気…ハッピーエンドの予感がしてきれいに終わりました。
第9話「タイムアウト」では荷物を派手に積んだトラックから荷物が落ち、タカシが下敷きになってしまいます。タカシを四つに切断しバラして自家移植でつなげて助ける方法がとられます。タカシは無事にたすかりましたが事故の原因となった槍杉建設はしらばっくれて治療費五千万円は支払いませんでした。ブラック・ジャックはタカシから風車をもらって五千万円の代わりとしています。後姿のブラック・ジャックと風車のコマで終わりますが世界で一番高額な風車となってしまいました。
----------
----------
----------
著者 手塚治虫
発行者 野間省一
発行所 株式会社講談社
1977年7月15日第1刷発行
----------
----------