小学生のひとみちゃんの飼い犬の柴犬「さくら」が東日本大震災の後、被災地にとりのこされるお話です。
少し変わっているのは地震のあと、(初めにひとみちゃんがどこにいるかは書かれていませんがおそらく)学校に迎えに来たお母さんと無事に自宅に帰ってきたところからお話が始まります。東日本大震災のお話だと主人公が実際に地震にあっている場面から始まることが多いのですがその部分はあとから回想シーンとして出てきます。
そのため地震よりも犬の方に気持ちが移りやすくなっています。
その後は放射能の影響で避難所の体育館に行くことになり、犬のさくらはおいて行かなければならないという現実に突き当たります。
津浪や地震の影響で人がどんどんなくなっているのにもかかわらずひとみちゃんが「さくら」の事ばかり心配しているのがリアルです。小学生の子供だったら「知らない他人が死んでいたり悲惨な目にあっている」よりも「わが家の可愛い愛犬」が一匹でいる事の方が大事件ですものね。
この後はのこされたさくらの生き抜こうとする闘いが始まるのですが…犬とは思えない考え方をするのでどうしても創作とわかってしまい冷めながら読んでしまいました。
自分がつながれていた鎖を切る方法として「下の道路へジャンプして自分の重みで鎖を切る」のですが、犬に重力で鎖を切る概念は無いと思います。
そして、自宅に貴重品を取りに来たバスの中に「ひとみちゃんがいる」と信じてバスをひたすら追いかけるシーンもあるのですが、犬は鼻が良いのでにおいでひとみちゃんがいるかいないかはすぐにわかるはず。
作中の貴重品を取りに来た人がさくらちゃんからボールペンとか何かを借りて持っていたりするという描写などがあったら自然だったかも。
感動的に見せるために犬の能力を人間的に改変しているので犬好きの人から見たら「?」と思う部分が多いのではないでしょうか。
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さくら 原発被災地にのこされた犬たち
作者 馬場国敏
画家 江頭路子
発行所 株式会社金の星社
初版発行 2011年12月
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