闘病記しか読みたくない

闘病記しか読みたくない管理人「つばめ」のブログです。日本中の闘病記が読みたい。悪趣味だと言われようが闘病記や病気をテーマにした本から感じ取れる生への記録に感動している毎日。本の紹介はネタバレを含みます。道端のポスターの写真等を撮るのも好きです。すべての写真は自分で撮影しているものです。

おとうさんがいっぱい

三田村信行さんの書いた救いようのない物語が5つまとめられています。

 

①ゆめであいましょう

ミキオが赤ちゃんだったころの自分を見ている所からスタート。ミキオは夢を見ていて「自分」とあっていたと思い込んでいる様子でしたが、実際にはもう一人の「ミキオ」が見ていた夢が「自分」なのかも?という不安が襲います。最後はミキオが真っ暗な空間に落ちてしまいます。救いようが無い。

 

②どこへもゆけない道

「タカシ」がふと「どうしていつもおんなじ道ばっかりで通っているんだろう」と思ったことから悲劇がはじまります。

自宅に到着すると大きなクラゲのような形をした薄灰色の何かが二ついて、タカシは驚いて家を飛び出します。

その後、一度駅前までもどってもう一度自宅に帰ろうとするも自宅にたどり着かない恐怖…最後には自分もクラゲのようなものになってしまって終わり。救いようが無い。

 

③ぼくは五階で

「ナオキ」が団地の501号室から出られなくなるお話。実際には出ることはできるのですがなぜか501号室に戻ってきてしまいます。

隣りの502号室にベランダから侵入しても501号室に戻り、シーツをつないで下に降りようとしても501号室に戻り501から出られません。

そうこう苦労しているうちにお父さんとお母さんは「引越し」の話をし始めます。ナオキはおそらく501から動けないので置いてけぼりになりそう。救いようが無い。

 

④おとうさんがいっぱい

「トシマ・トシオ」のお父さんが三人になってしまうというお話。全員ちくのう症の手術をしたことがある様子。トシオの父だけでなく、世の中のお父さんが0~12人増えてしまうという不思議な現象が起こります。ショックで自殺をしてしまった家族もたくさんいたと書かれており事態の異常さがわかります。

トシオの母はショックをうけてしまい一日の大部分は睡眠薬を飲んで寝ており、現実逃避をしてしまいます。

増えてしまったお父さんは「家庭再組織委員会」によって余分人間として管理され、別の人間として生きていく事になります。

最後はもう一人の「トシオ」が「トシオ」の前に現れて終わり。救いようが無い。

 

⑤かべは知っていた

「カズミ」のおとうさんが「壁」から出られなくなるお話。カズミは女性名の様ですが「ぼく」という一人称なので男の子の様です。

みずから望んで異世界?異空間である壁に入ってしまった父ですが、地震によって空間の構造が変わってしまったらしく現在の世界への通路がふさがれ本格的に壁から出られなくなります。

自分の死を悟ったお父さんカズミにノートの自分の人生を書かせ終わったころに引越しをすることになります。お母さんは新しく知り合ったHという男性に夢中ですっかりお父さんの事を忘れてしまった様子。

カズミはお父さんにもらった10万円を手に、一人で生きていけるところがあるかもしれない」と今後家には帰らないような決意をして物語は終わります。救いようが無い。

 

一つぐらいはハッピーエンドのお話があっても良かったのに。一番ハッピーだったのは⑤かべは知っていたのカズミの母かも。嫌っていた父は壁に閉じ込められ、カズミは家出をしたのでH氏と二人で新居での新生活が待っています。H氏は優しそうな男性なのでカズミの母は幸せになれそう。

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おとうさんがいっぱい

作者 三田村信行

画家 佐々木マキ

発行 下向実

発行所 株式会社理論社

2003年2月初版

2003年2月第1刷

ロマンブック版 1975年 1977年12月2刷最終版

フォア文庫版 1988年

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