11歳のジョシュが主人公。ジョシュには16歳の知的障害の兄ヤードランがいます。ヤードランはパワー系の知的障害者のためバクハツするととんでもないことをしでかす困った所があります。
弟だからとヤードランの面倒を見続けるジョシュが気の毒になりながら物語を読み進めることになります。
ジョシュの家族は複雑で、母はジョシュの父とは離婚しており、現在はムラットという彼氏に夢中。ムラットには連れ子のヤスミンがいて、ヤスミンはジョシュと同い年です。
ムラットとヤスミンがジョシュの住む狭いアパートに引っ越してきたので地獄のようなシュチュエーションでジョシュは生活しています。(ムラットもヤスミンも良い人ですが…)
ある日、家族で湖に行った時に兄弟は片方の翼に釣り糸が絡まって怪我をしている鶴の子を見つけます。鶴の子を自宅のベランダに住まわせ「スプリート」と名前をつけ二人は怪我の様子を見つつ可愛がります。
このスプリートが飛べるように訓練する事になるのですが、高所でスプリートに飛ぶ訓練をさせている時にヤードランはジョシュを突き落としてしまいます。
10メートルもある場所から突き落とされたジョシュは足を三か所も骨折してしまいます。パワーがある知的障害者の恐ろしさが伝わってくる内容です。ヤードラン本人は高い所から落ちると大怪我をするという自覚がなかったと思われるので当然悪気は無いのですがあまりにもひどい展開でゾッとしました。
骨折なので一生歩けなくなるという事は無かったのですが一歩間違えば死、もしくは一生車椅子生活だったと考えるとヤードランがやったことは許される事ではありません。
そんな理由もありヤードランを施設に入れようとする親や先生たちに反発するようにヤードランとジョシュはスプリートを仲間たちの元に返そうとトラクターで鶴の生息地に進むことになります。
家族に内緒で行くことにするも、ここでヤスミンはジョシュに自分のスマートフォンを渡します。スマホ利用者ならピンとくるかもしれませんがこのスマホで位置情報を割り出し、ヤスミンはジョシュとヤードランの場所を監視していました。
スマホ利用者だったらこういう時にスマホを渡されたら疑って最初にスマホを捨てるんですがジョシュは律儀に持って行ってしまいます…
ラストはヤードランは施設に行くことなく兄弟仲良く暮らせるようなハッピーエンドとなります。でもこれで良かったのかな?とも思ってしまいました。16歳のヤードランはますます力が強くなりさらにとんでもないことをしでかすような気がしないでもない。
裏表紙に書かれているきれいな「青いつばさ」が物語に大きく絡んでくるので本文にさし絵があればもっと良かったかも。
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青いつばさ
作 シェフ・アールツ
訳者 長山さき
カバー画・カット hiroko
発行人 小宮英行
発行所 株式会社徳間書店
2021年9月30日初版発行
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