NHK厚生文化事業団編集による13の物語がまとめられている本です。
1・吉村章さんはご自身の居眠り運転により頸椎骨折で体が不自由になります。当時の彼女との別れや母の交通事故など苦しい時期も続き、頸椎損傷のため車椅子生活になりますが、職場で奥様と出会い幸せな生活を手に入れます。
2・中村和子さんは網膜色素変性症による視覚障害ですが前向きに生活しています。夫の慢性的な病気(病名不明)や子育ての苦労や幸せ等を丁寧にまとめておられ、現在は白い杖の代わりに盲導犬ホルンのハーネスを握る生活と書かれています。
3・浦上誠さんは我が子が筋ジストロフィーと診断され夫婦の絆が壊れそうであったことを書かれています。浦上さんは「自分がこの世に存在した証しは息子ができること」と考えておられて少し男女差別かも?と思いました。名前も男の子の名前しか考えていませんでした。酷いですね。
そして生まれたのは女の子…杏子(ももこ)と命名され筋ジストロフィーと診断されます。
二番目の女の子も授かりますがまたしても筋ジストロフィーと診断されます。杏奈と名付けられ最終的には二人の娘は浦上さんの人生の師となります。
夫婦の交換日記では奥様が風邪をひいた事等も書かれいました。
4・笹森理絵さんは息子と同じ軽度発達障害でADHDや算数の学習障害(LD)があります。大学を出てすぐ結婚した笹森さんは自分がおかしい事にほとんど気が付かないまま生活していました。大学を出た後、企業で働いていたらすぐ何かしらの障害があるとわかったと思われるので気の毒です。のちほど仕事をしだしても全く仕事が出来ず神経科に通いだします。
同じく息子にも笹森さんと似たところがありました。息子は軽度の知的障害、高機能自閉症と診断され、後ほどADHDとてんかんの診断も追加されています。
ご自身と子供たちの障害がわかったらずいぶん生活がしやすくなったようでホッとしました。
5・小佐野美智子さんは脳性まひですが凛々しく生活しています。アテトーゼで顔が歪んでしまっても「自分の顔が本当に好き」と語っています。その後は同じく重度障害者である彼氏と出会いますます生活を充実させていきます。
6・松兼巧さんは脳性まひによるアテトーゼがありますが、前向きに生活しています。海外旅行にも出かけ、人と出会い、ポジティブな毎日が魅力的でした。
7・徳澤麻希さんは言語聴覚士であり、おなじ言語聴覚士の彼氏が交通事故による頸椎損傷でした。障害を持った後に出会い惚れこんでいるので本当の愛だと感じました。
悲しい事に赤ちゃんを流産してしまうという不幸もありましたがその後は二児に恵まれ夫婦で元気に仕事をしていることが書かれていました。
8・松山良子さんは息子に不安神経症があり、ひきこもり、家庭内暴力で苦労しています。松山さん自身がカウンセリングを受けることにより家庭内が安定し息子さんも落ち着いてきます。息子による暴力にもまけずに支え続けた松山さんは凄い。ちょっとこの息子は腹が立つタイプなのであまり支えたいとは思えませんでしたが…(私は暴力が嫌いなので暴力的なタイプは苦手)
9・江口敬一さんは息子がダウン症。この息子が頑張り屋さんでホームヘルパー資格にチャレンジしています。テキストで勉強し、見事に二級の資格を取ります。その後は高齢者デイサービスセンターでしっかり働き生活が生き生きとしている事がわかりました。
10・藤野高明さんは不発弾の事故で両手切断となり、視覚障害にもなります。しかしながら独学で点字を学び、盲学校の教壇に立つようになります。目の見えない人は手で本を読むので両手切断というハンデが重くのしかかっていました。唇で点字を読むという人間の能力のすばらしさに感動…
11・天畠大輔さんは医療ミスから脳の運動神経にダメージを受け四肢まひ、言語障害、視覚障害となり自ら動くことができなくなります。
天畠さんの母が五十音を一文字ずつ確認していく方法でコミュニケーションが取れる様になり大学生活に進みます。たくさんの仲間に支えられ天畠さんの大学生活は充実したものになりました。
体が動かず、目も見えず、言葉も話せず、耳だけでここまで勉強できるのは凄い。
12・横田真司さんは個性豊かな四人の障害者と一緒に暮らしている事を書かれていました。知的障害者生活寮での暮らしなので住んでいる人は知的障害やダウン症を持っています。それでも毎日にぎやかに楽しく生活をしています。タブチくんのいんきんたむしの治療も進んでやり、優しい人だという事も分かりました。
13・嶋崎とし子さんは親子三代にわたる筋ジストロフィーの物語をまとめていて読み応えがありました。嶋崎さんの筋ジストロフィーのタイプはFSH型のため比較的ゆっくりです。
父はまだ動けるうちに脳内出血で亡くなってしまったのですが、嶋崎さんは夫と息子にも恵まれ幸せな生活を送ります。
息子も進行はゆっくりではあるものの筋ジストロフィーによるお口ぽかんがあらわれ、カメラを向ける人に「Dちゃんお口閉じて」と言われ過ぎたため写真嫌いになってしまったとあり生々しいなと思いました。お口ぽかんは気になる人は気になるからなあ…(私も気になるけどなるべく人には言わない様にしています)息子のいじめ問題は気の毒でした。
嶋崎さんはその後は拘束性肺機能障害と診断されるも前向きに生活しています。
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雨のち曇り、そして晴れ 障害を生きる 13の物語
編者 社会福祉法人 NHK厚生文化事業団
発行者 遠藤絢一
発行所 日本放送出版協会 NHK出版
2010年8月25日第1刷発行
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