「いのち」と「こころ」について書かれた手塚治虫先生のマンガを元にしてある本です。
どちらかと言うと命の大事さについて書かれた話が多いです。
1・環境について考える 「シルバー・タワー」(鉄腕アトムより)
環境問題や環境破壊について描かれているのですが「例の大地震で地形がすっかり変わった」とまるで未来予知の様なセリフからはじまります。
地球の空気が汚れ、所によっては放射能もあります。現在の日本のお話の様です。
2・家族について考える 「聖なる広場の物語」
小鳥のヒワが大きな敵と戦う物語です。化学性貯蔵物や廃棄物から漏れ出る汚染された砂「聖なる砂」をかぶって醜くなっていくゴーズと闘い片足が切断され羽も切れてしまいますが家族を守ったヒワの目が清々しい物語です。
3・友情について考える 「最後はきみだ!」
戦争がはじまる事を仲間に伝えようと奮闘する三人が頑張る物語。戦争は無くなるものの主人公は二人の親友を失ってしまった…というお話。
4・嘘について考える 「ハローCQ](ブラック・ジャックより)
筋ジストロフィーのジュンが野球が出来ると無線仲間のトムに嘘をついていた事から物語は始まります。そしてトムも目が見えないという事をジュンに隠して交信していました。車いすに乗っているという事や視覚障害であるという事は今でこそ隠すことでは無いとは思うのですが昔(昭和50年7月21日に掲載されたとあります)は隠したい事だったのでしょうね…切なすぎます。
トムが日本に来て筋ジストロフィーと視覚障害の手術をブラック・ジャックに託す所で物語は終わります。筋ジストロフィーが手術で治るかな~と疑問に残りましたが爽やかな終わり方です。
5・命について考える 「小うるさい自殺者」(ブラック・ジャックより)
喬(たかし)という青年が自殺をする所からはじまります。偶然ブラック・ジャックが通りかかり頭蓋骨骨折、くも膜下血腫の大怪我を追いますが命はとりとめます。死に未練がある喬はブラック・ジャックに安楽死を請け負っているドクター・キリコの元へ連れていかれます。
自殺未遂という事実がある事でキリコに預けられた喬は千代子に出会います。千代子は腎炎で尿毒症による意識混濁をおこし腎性昏睡になりますが喬は自分の腎臓を千代子にあげると言い切り、自殺をしない事を誓ったら一パーセントの可能性のある手術をブラック・ジャックがするかもしれない…という所で終わります。喬が惚れっぽすぎて驚いたお話。
6・希望について考える 「7日の恐怖」
戦争や七つの大罪を犯し続けた人間に愛想をつかした創造主が一度人類を滅ぼし、新たに世界を作り直そうとしていたところに1人だけ遺された大林三郎(13歳)が頑張るお話。
最後は四郎として目覚めるのですが人間もまあまあ良くなってきているのでは?という希望を持った終わり方をします。
7・戦争について考える 「紙の砦」
大寒鉄郎と岡本京子が出会う所からはじまります。時代は戦争中で漫画等を描いていたら裏切り者と殴られる時代です。杏子も宝塚音楽学校へ入るもダンスもピアノも芝居もできない状態です。
空襲で杏子は舞台に立てないほどの酷い怪我を顔に刻みます。戦争は誰も幸せにならないことがはっきり書かれた作品でした。
8・死について考える 「瞑想の園」(ブッダより)
幼い頃のシッダルタが死について考えるお話です。ウサギになったり鳥になったりしながら自分が死ぬ瞬間を感じ取ります。
長編の一部を切り取ったお話なのですが不自然なところがなくスッキリ読める所が手塚治虫の凄い所だと思います。宗教の話が苦手なので、まだ手塚治虫のブッダは読んだことが無いのですがこのお話を読んで読もうと思いました。
どのお話もレベルが高すぎました。
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「いのち」と「こころ」の教科書
著 手塚治虫
監修 谷川彰英
発行人 小林茂
発行所 株式会社イースト・プレス
2007年11月11日初版第1刷発行
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