タクシードライバーが主人公のミッドナイトは交通事故だけでなくたくさんの病気や障害が登場します。絵もキレイでミッドナイトが可愛らしい性格なので安心して読めます。
ACT.1では視覚障害のおじいさんが登場。視覚障害を持ちながら花火を作る天才肌なのですが、親友に目を意図的に潰されたというのに親友を許し、次回作への意欲を燃やすという爽やかな終わり方が良かった。
ACT.2では脳死の彼女の心臓が止まった事でミッドナイトは病院へ駆けつけます。うっかりキーを刺しっぱなしにしていて車を盗られ慌てるミッドナイトに病院の先生は「警察に届けたまえ」と冷静に対応している所がポイント高いです。ミッドナイトの車は薬物中毒の連中をわざと連れまわしてお金を稼いでくれていた描写がありこの車は生きているんだなあ…と不思議に思いました。連中の親もシンナー中毒死をまぬがれたと一千万円をポンとミッドナイトに渡すのが凄い。
ACT.3では前回の一千万円を持ち脳死の研究者リーゼンバーグ教授に会いに行きます。教授は日本人がきらいと言い切るタイプ。リーゼンバーグ教授はミッドナイトの頑張りで昔好きだった女性と出会いハッピーエンド。この時代で東京で一人で頑張って生きていた女性の精神力が見事です。
ACT.4では引き続きリーゼンバーク教授が登場。ブラック・ジャックの名前を聞いて「名前は知ってる…」と言いながらもものすごく知っているような顔をしているのが印象的。教授は生体実験をしていたという過去があることがわかります。
ACT.5では中国残留孤児の女性と会います。彼女はがんで亡くなる中国の母に会いたいとミッドナイトのタクシーに乗り込みますが飛行機は欠航…ミッドナイトがテレビ局に連絡し、テレビ越しに親子対面が叶うのですが、臨終の瞬間を放送しちゃったのかあ…
ACT.6ではミッドナイトが故郷に帰ります。思い出の中のミッドナイトの父はミッドナイトと全然似ていません。父は酒乱で雪の夜に凍死をしてしまいます…
ACT.7では大病をわずらった女性が登場します。財産などがすっからかんになっているという描写があるので保険の効かない治療をうけたのかもしれない…ノーベル物理学賞をとった神田河大郎の先生が現在貧乏暮らしというリアルさが良かった。
ACT.8ではカササギ運輸の美人ドライバーカエデが登場します。ミッドナイトの人の良さでカエデの命を救う事になります。そしてカエデに自殺の暗示をかける悪者が登場。面白い能力なのですぐ逮捕されたのがもったいない。
深夜タクシーという内容でここまで話が広がるのが凄い。
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ミッドナイト3 手塚治虫漫画全集356
著者 手塚治虫
発行者 山野勝
発行所 株式会社講談社
1995年5月17日第1刷発行
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