表紙はコートからメスを取り出しているブラック・ジャック。外で物騒な動きをしています…
①「ブラック・クイーン」では珍しくブラック・ジャックが女性に心惹かれます。とても美しい桑田このみさんなのでブラック・ジャックが惚れるのも無理はない。このみさんの恋人がブラック・ジャックの親友だった「間久部」にそっくりなのが辛いですね…
このみの恋人ロックがクレーンにはさまれ大怪我をするのですが、きちんと手術で治すブラック・ジャックは偉いです。
②「死への一時間」ではドクター・キリコが登場します。キリコが持っていた安楽死の薬がジュリアーノに盗まれ、その薬を心臓病の母親に飲ませてしまう…というお話。
カバンを盗られた事に気が付かないキリコが人間臭くて良いですね。キリコが女性をお姫様抱っこしている所が素晴らしい。
③「ハッスル・ピノコ」はピノコが試験の緊張に耐え切れず胆道ディスキネジーになるお話。ブラック・ジャックのパパっぽさが出ていてほのぼの回なのですが、最後のブラック・ジャックの落ち込みの絵が可哀想すぎます。まあ我が子が幼稚園を追い出されるほど問題児だったら落ち込むわな。今だったらピノコは発達障害を疑われるかもしれない。
④「ある老婆の思い出」では子宮破裂の女性をブラック・ジャックが手術するところからはじまります。看護師と医師のやりとりに考えさせられるお話。仕事は仕事なので人それぞれなので死を軽く見ている医師の事は責められません。
⑤「不発弾」ではブラック・ジャックが復讐をしています。砂地に地雷を埋める手の込みよう。井立原さんという不発弾処理を不正に行っていた悪人が地雷でふっとぶので気の毒ではありますがざまあという気持ちも多少あります。気になるのはその後きちんと地雷を撤去したのかどうか、ですね。偶然にも地雷原に他者が入り込んで地雷で怪我をおったらブラック・ジャックが井立原と同じ立場になってしまいます。
⑥「身代わり」では子宮体がんほか、がんを複数抱えた女性をブラック・ジャックが手術します。ブラック・ジャックとよく似たクロイツェル博士の身代わりになるのですが、ブラック・ジャックは良く似た顔の人が多い気がします。ジョナサンという顔のそっくりな男性もいましたし。まあ男前の顔って結構似ているのでそのせいでしょう。
⑦「サギ師志願」では心臓発作を起こし川崎病の少年を手術しています。人の良い矢武井医師はブラック・ジャックに連絡し、少年の父に自分はお金持ちだと嘘をつく事を提案します。この父は腹膜炎で治療したことがあるので病気の苦しみはわかる様子。
最後はブラック・ジャックはそっと裏口から出ていくのですが、矢武井医師の事は気に入っているらしい事がわかりました。
⑧「ディンゴ」では新手の寄生虫で自分を手術するブラック・ジャックが見どころです。しかも屋外。人間のまいた農薬などでエヒノコックスの新種が生まれてしまった皮肉なお話でした。
⑨「針」では人体の不思議について書かれています。血管内で折れてしまった針が移動し刺さった穴から出てくるという不思議な現象。外科的処置で取り除けなかったのでくやしがるブラック・ジャックが印象的でした。
⑩「空からきた子ども」では心室中隔欠損症の少年アンドレイが出てきます。手術としては母親が息子をおんぶするようにくっつける手術なのですが倫理的にどうなんでしょう。最後はきちんと二人を分離するとは思うのですが分離されるまで日常生活が大変そうです。
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著者 手塚治虫
発行者 五十嵐隆夫
発行所 株式会社講談社
1981年1月20日第1刷発行
1998年12月18日第9刷発行
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